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介護費用過去最高更新ー我々の生活への影響は?

2023年度の介護費用、2・9%増の11兆5139億円 高齢化で最多更新

厚生労働省は26日、介護保険からの給付や利用者負担を含めた2023年度の介護費用が、前年度比2・9%増の11兆5139億円となり、過去最多を更新したと発表した。高齢化が進み、利用者数が増加したことが要因。調査を始めた01年度の4兆3782億円から約2・6倍に膨らんだ。

出展:産経新聞 2024/9/26

介護保険料が最高の月6225円 65歳以上、2024~26年度

厚生労働省は14日、2024~26年度の65歳以上の介護保険料が全国平均で月6225円になると発表した。21~23年度と比べて3.5%上がり、過去最高となる。高齢化で介護保険料は上昇が続き、制度が始まった00~02年度の2911円の2.1倍となった。

出展:日本経済新聞 2024/5/15

介護保険料の決定と納付の仕組み

介護保険料は、自治体ごとに異なる仕組みで決定され、被保険者が支払います。

まずは、介護保険料の決定と納付の仕組みについて説明します。

1. 介護保険料の決定方法

介護保険料は、自治体ごとに高齢者の介護サービス需要や財政状況に基づいて決定されます。以下がその仕組みです。

1.1 第1号被保険者(65歳以上)の保険料

65歳以上の方(第1号被保険者)の介護保険料は、主に所得に応じた段階別の仕組みで決まります。

  • 所得段階による保険料の区分: 自治体は高齢者の所得に基づき、複数の保険料段階を設けています。これにより、所得が高いほど保険料が高く、所得が低いほど保険料が低くなるように設定されています。
  • 標準保険料率: 自治体はまず、次の3年間(計画期間)に必要な介護サービスの費用を見積もり、そのうち65歳以上の方が負担すべき金額(介護保険全体の約20~23%)を基に、標準的な保険料率を決定します。この保険料率が所得段階に応じた保険料に反映されます。
  • 具体的な保険料: 自治体は、個々の被保険者の年金や課税所得をもとに、適切な所得段階を決定し、その段階に応じた介護保険料が設定されます。

1.2 第2号被保険者(40歳から64歳)の保険料

40歳から64歳の方(第2号被保険者)は、医療保険に加入しているため、介護保険料は医療保険料と一体化して徴収されます。

  • 加入している医療保険の種類: 健康保険組合や協会けんぽ、国民健康保険など、加入する医療保険の種類によって介護保険料が異なります。
  • 収入に基づく保険料: 医療保険料の中に介護保険料が含まれており、その額は収入に基づいて決まります。つまり、医療保険の保険料に連動する形で介護保険料も自動的に徴収されます。

2. 介護保険料の納付方法

介護保険料の納付方法は、第1号被保険者第2号被保険者で異なります。

2.1 第1号被保険者(65歳以上)の納付方法

65歳以上の介護保険料は、主に以下の2つの方法で納付されます。

  • 年金からの天引き(特別徴収): 年額18万円以上の公的年金を受け取っている場合、介護保険料は自動的に年金から天引きされます。この方式を「特別徴収」といいます。
  • 口座振替や納付書払い(普通徴収): 年金受給額が少ない場合や新たに65歳になった人など、特別徴収の対象でない人は、自治体から送られる納付書や口座振替により納付します。この方法は「普通徴収」と呼ばれます。

2.2 第2号被保険者(40歳から64歳)の納付方法

40歳から64歳の介護保険料は、医療保険料に含まれて納付されます。

  • 給与からの天引き(会社員の場合): 健康保険に加入している場合、医療保険料とともに給与から自動的に天引きされます。
  • 自治体へ納付(自営業などの場合): 国民健康保険に加入している人は、介護保険料が国民健康保険料に含まれており、自治体へ納付します。納付は、口座振替や納付書で行われることが多いです。

3. 自治体による介護保険料の調整

介護保険料は3年ごとに見直されます。これは、各自治体が高齢者人口や介護サービスの利用状況に基づいて、次の3年間に必要な介護費用を計算し、その費用をカバーするための保険料を設定するためです。

  • 介護サービスの需要: 高齢化が進む地域では介護サービスの需要が高まるため、保険料が上昇する傾向があります。
  • 財政の健全性: 自治体ごとの財政状況や介護保険財政の健全性によっても、保険料が変動します。

まとめ

介護保険料は、自治体が必要な介護サービスの費用を見積もり、所得に応じた段階別に設定されます。65歳以上の人は主に年金からの天引き、40歳から64歳の人は医療保険料と一緒に納付する仕組みです。3年ごとに保険料は見直され、自治体ごとに異なる金額が設定されるため、住んでいる地域や所得状況によって負担額が異なります。

ちなみに、冒頭の日経新聞によると、最も高い保険料の自治体は大阪市:9,249円。最も安い保険料の自治体は東京都小笠原村3,374円。差が5,875円あります。皆さんお住まいの自治体はいかがでしょうか?引っ越しする際は近隣と比べてみてもいいかもしれません。

介護費用増加が我々の生活に及ぼす影響は?

それでは、介護費用が増加することは、今後の生活に様々な影響をもたらします。

以下のような点が挙げられます。

1. 税金や保険料の増加

介護費用が国全体で増加すると、その財源を確保するために、税金や介護保険料の引き上げが必要になる可能性があります。特に介護保険は現役世代からの支払いもあるため、若い世代にも負担がのしかかり、家計への圧迫が懸念されます。

2. 介護サービスの質と量への影響

介護サービスの需要が高まる一方で、人手不足や予算の制約があるため、サービスの質や提供できる量に影響が出る可能性があります。介護施設への入所待ちが長引く、訪問介護の提供時間が短縮されるなど、介護サービスの利用が難しくなることも考えられます。

3. 家族への負担増加

介護費用が増大すると、家庭での介護負担が増す可能性があります。特に、介護サービスの利用が費用的に困難になる場合、家族が介護を担う割合が高くなり、働き盛りの世代の介護離職や、女性の負担増が社会問題となる恐れがあります。

4. 生活設計への影響

高齢者自身やその家族が老後の生活設計を見直さなければならない状況が増えるでしょう。介護費用の増加に備え、貯蓄を増やしたり、住宅をバリアフリーに改築する費用を準備するなど、今後の資産管理やライフプランが介護を前提にしたものになることが予測されます。

5. 経済全体への影響

介護にかかる社会的コストが増えると、国全体の財政に負担がかかります。これにより、介護以外の公共サービスや他の社会保障費への投資が制約される可能性があります。また、介護に関わる労働力不足が産業全体の生産性に影響を与え、経済成長に悪影響を及ぼすことも懸念されています。

介護費用の増加に対応するためには、家族や個人が自身の介護に備えた準備を早めに行うことが重要であり、同時に、国や社会としても効果的な介護システムの改革が求められています。

介護費用増加への準備どうすればいい?

介護費用の増加に備えて、個人や家庭、社会全体でどのような準備が必要かについて、いくつかの視点から解説します。

1. 経済的な準備

  • 老後資金の計画: 介護が必要になった場合を想定し、老後の資金計画を早い段階から立てておくことが重要です。介護費用は公的保険でカバーされる部分があるものの、自費負担も大きいため、余裕のある貯蓄を目指すことが必要です。
  • 介護保険や民間保険の利用: 介護保険だけでは十分なサービスを受けられないケースもあるため、民間の介護保険や長期ケア保険に加入することも検討するべきです。加入時には、保険の適用範囲や金額をよく理解して選ぶことが重要です。

2. 住居の準備

  • バリアフリー化: 自宅で介護を受ける場合を想定し、事前にバリアフリー化を検討することが必要です。手すりの設置、段差の解消、広い廊下やトイレの設置など、住環境を整備することで、自宅介護の負担を軽減できます。
  • 住み替えの検討: 高齢になってからバリアフリー化が困難な場合は、あらかじめバリアフリーのマンションや高齢者向け住宅に住み替えることも選択肢です。

3. 介護に関する知識の習得

  • 介護制度の理解: 公的介護保険制度や、利用可能な介護サービス、費用負担の仕組みについて理解しておくことが重要です。どのような状況でどのようなサービスが利用できるかを知っておくことで、いざというときにスムーズに対応できます。
  • 介護技術の基礎を学ぶ: 家族が介護を担う場合に備えて、基本的な介護技術や知識を身につけておくことが役立ちます。自治体や介護支援団体が提供する講座やセミナーを活用するのも良い方法です。

4. 家族間の話し合い

  • 介護に関する事前の相談: 介護が必要になった場合の家族の役割や対応について、事前に話し合っておくことが大切です。どの程度の介護を家庭内で行うか、費用負担をどうするか、外部の介護サービスをどのように利用するかなどをあらかじめ家族で共有しておくことで、いざというときに混乱が少なくなります。
  • エンディングノートの活用: 自分がどのような介護を希望するか、また、どのような治療や介護施設を利用したいかなど、エンディングノートに記録しておくことで、家族がその意思を尊重しやすくなります。

5. 社会的なサポートの活用

  • 地域のサポートネットワーク: 自治体や地域の介護サポートネットワークに積極的に参加し、どのような支援が利用できるかを調べておくことが大切です。地域包括支援センターや介護相談窓口を通じて、情報や支援を受ける準備をしておくと安心です。
  • 介護休業制度の活用: 働きながら家族の介護を行う可能性がある場合、介護休業や介護短時間勤務などの制度についても理解しておく必要があります。企業の福利厚生や政府の支援制度を活用することで、介護と仕事の両立が可能になります。

6. ライフプラン全体の見直し

介護費用が増加する中で、老後の生活や働き方の見直しが求められる場合があります。定年後に再就職や副業を行うことで収入を確保する、あるいは早期退職を避け、できる限り長く現役で働くなど、個々のライフプランを柔軟に調整することが必要です。

これらの準備を進めることで、介護費用の増加に伴う生活への影響を最小限に抑え、安心して老後を迎えるための対策を講じることができます。